Q.犬の耳掃除は必要ですか?
犬の耳掃除には2つの意味があります。
1)過去に外耳炎を起こしたことがあるなどの外耳炎になる素因がある犬に対して予防
2)外耳炎の耳の耳垢などの除去
です。外耳炎はアトピー性皮膚炎や脂漏症など様々な要因が複雑に絡み合って発生するため、慢性化や再発することが多いです。皮膚のバリア機能を損ねるため過剰な洗浄はダメですが、基本的に外耳炎を起こす可能性がある場合は耳掃除が必要になります。
耳掃除のやり方
(1) 洗浄液をたっぷりと耳道に入れて耳道全体を優しく30回程度マッサージします。
(2) 犬に頭を振らせて洗浄液を外に出させます。
(3) 耳垢がなくなるように何度か繰り返します。
耳掃除の注意点
・どこをマッサージしたらいいの?
犬の耳道は人間と違ってL字になっています。入口から縦に垂直耳道があり、曲がった先に水平耳道があります。マッサージの時は、表面からこのようなホース状の耳道が触れるのでこのホースをもみもみしてあげてください。
耳の構造(Dermatology 45より引用)
・綿棒で耳掃除してもいい?
綿棒での耳掃除は絶対してはいけません。耳には耳垢を自動的に外に出そうとする機能があります。しかし綿棒を使うことでせっかく外まで出ようとしていた耳垢をまた奥に押し込んでしまいます。せっかく耳掃除をしたはずが、下図のように耳垢をまた耳の中にためてしまう原因になりますので綿棒は使わない方がいいでしょう。
耳道の模型(Dermatology 45より引用)
・耳掃除を嫌がって上手くできない時はどうしたらいいの?
本来は耳垢が出なくなるまで耳掃除を繰り返した方がいいですが、わんちゃんにも飼い主の方にもストレスにならないように気長に少しずつやりましょう。最初にも書いたように外耳炎は繰り返すことが多いので、一生耳掃除と付き合うことになるかもしれません。いきなり完璧な耳掃除はできません。少しずつでいいので継続的にケアできる程度にやりましょう。
耳掃除を初めてやる子犬や耳掃除が苦手なわんちゃんには耳道の入口に脱脂綿を入れて脱脂綿を介して洗浄液を入れたり、冬は洗浄液を使う量だけカップに移して人肌程度に温めてから使うといいかもしれません。
また嫌がる原因として痛みがある可能性があります。その場合は状況によって治療を変える必要があるので無理に耳掃除だけでケアするのは危険です。わんちゃんの様子がおかしいなと思ったら、一度診察に来ることをお勧めします。
外耳炎を放置するとどうなるの?
外耳炎が中耳に波及すると中耳炎となります。犬の中耳炎の80%は慢性外耳炎によって起こります。中耳炎になると顔面神経麻痺や首の傾き、眼の揺れなどが見られることがあります。治療が困難な中耳炎や、耳道が狭くなったり固くなっている場合、耳道内にポリープなどのできものがある場合は外科手術が必要となることもあります。そうならないために耳を見ることを習慣にしてください。家でスキンシップやブラッシングをしながら必ず耳を見るようにしてください。異常に早く気づくことが大切です。
飼い主さんに注意してほしいこと
外耳炎は再発や慢性化することが非常に多いため、一生付き合うことになるかもしれません。家でのケアがうまくいかない場合や耳垢や臭いが増えた場合、痒みや頭を振ることが増えた場合は外耳炎のサインかもしれません。もしいつもと違うことがあれば、一度診察に来ることをお勧めします。