妊娠を望まない場合は、病気の予防や望まない妊娠を避けるために、避妊・去勢手術をおすすめします。
避妊・去勢のメリット・デメリット
◆メリット
1)性ホルモンに関連する病気を予防できる
雄の場合、精巣腫瘍や前立腺肥大など、雌の場合、乳腺腫瘍や子宮蓄膿症などの病気の予防ができます。特に乳腺腫瘍に関しては、犬は初めての発情の前に手術をすれば99.5%・猫は6か月齢までに手術をすれば91%の予防効果が期待できるといわれています。
2)発情期によるストレスの軽減や性ホルモンに関連する問題行動を抑えることができる。
雄の場合、雌を求めて徘徊したり、他の犬への攻撃性が増すなどの行動が抑えられたり、雄猫の雌の場合、発情による陰部からの出血がなくなり、発情期が近づくと気分が不安定になったりするなどのストレス軽減にもつながります。
3)望まれない妊娠を防ぐ
子どもをつくらないと決めたのであれば、望まない妊娠を防ぐためにも避妊・去勢手術をおこないましょう。
◆デメリット
1)麻酔のリスクがある
早期の若齢期による全身麻酔は、肝臓の代謝能力や腎臓の排泄機能が未熟であるため。また、肥満体型の子や短頭種は他の健康な子と比べると麻酔のリスクが高まります。麻酔に対してアレルギーを持っている場合もデメリットとなります。
2)不完全な結紮(けっさつ)による出血をする、術創が治りにくい(自己損傷)ことがあります
3)縫合糸の感染およびアレルギー反応
お腹のなかで糸が反応し、傷口が腫れたりすることがあります。
4)エストロジェン反応性尿失禁
避妊手術後の大型犬にみられることがあり、尿漏れを引き起こすことがあります。女性ホルモン(エストロジェン)は尿道の括約筋に関係しているため、エストロジェンが少なくなると、おしっこを我慢できなくなるためです。
5)肥満や尿路結石になりやすい→食事管理をしていきましょう!!
避妊・去勢後は必要とするエネルギーが減る一方、性的ストレスがなくなり消費カロリーが減るため、肥満になりやすくなります。また、肥満によって尿路結石になるリスクが高まります。
6)子どもができなくなる
精巣、卵巣、子宮をとるので、子どもがつくれなくなります。
当院の避妊・去勢手術
【 犬の場合 】
避妊:生後7~8か月以上 発情が1回済んでから
発情中や発情後すぐの手術は子宮や卵巣、血管が発達しており、出血のリスクが高まるため手術をすることができません。そのため発情後、2か月間は間をあけましょう。
去勢:生後7~8か月以上
※生後7か月頃に乳歯から永久歯に生え変わるため、乳歯遺残(乳歯が抜けず、残ること)がある場合は一緒に乳歯抜歯をおこなうことがあります。
【 猫の場合 】
避妊・去勢:生後8か月以上、体重が3㎏以上
体格が小さい子は3㎏未満で手術することもあります。猫は発情中でも手術ができます。
当院の避妊・去勢手術の流れ
ご紹介する流れは一例となります。
1)ワクチンやノミ・ダニの予防は済んでいるか確認しましょう。
病院には他の犬や猫も入院・通院するため、病気をもらわない、うつさないためにも予防を済ませましょう。
2)病院にご来院頂き、手術についてのご説明をさせていただきます。
手術の内容にご納得いただいてから日程を決めていきます(手術は予約制です)
3)手術の前に術前検査をおこないます。
手術は麻酔をかけるため、麻酔をかけても大丈夫か、また他の病気の早期発見・治療のために血液検査・心電図・(場合に応じて詳しい検査)をしていきます。手術予定日より前の2週間以内に必ずおこないます!
4)手術の当日は午前の診察時間の11時までにお預かりとなります。
当日は絶食絶水(ごはん・お水は与えない)の状態で連れてきてください。
5)入院前に同意書の記入、緊急連絡先の確認、お迎え時間の確認をします。
6)お昼に手術をおこないます。
避妊手術の場合1泊入院となります。
去勢手術は日帰り入院(当日の午後の診察時間にお迎え)です。
7)退院後はお薬が出ます。
3~5日間ほど抗生物質と痛み止めを飲ませてください。
8)傷のチェックでご通院いただきます。
猫の避妊、犬の避妊去勢後は手術後3~5日後に傷口のチェックに診察にご来院ください。
9)抜糸をして、傷口がきれいになったら通院終了です!
個体差はありますが10日~14日ほど抜糸をおこないます。
猫の去勢手術は糸を使わないので抜糸の必要はありません。
※ノラ猫などに対して、抜糸が必要ない「皮内縫合」もあります。
避妊・去勢手術のよくある質問
Q.なぜ当院は犬の避妊は1回目の発情が過ぎてから手術をするの?
A.発情が起こる前は体や内臓、生殖器の機能が未熟なためです。
Q.手術前になぜ、食事を与えてはいけないの?
A.全身麻酔をかけると、意識はもちろんのこと、全身の力も抜け、胃や腸にも麻酔がかかります。麻酔をかける前、かけた後は吐き気をもよおすことがあり、さらに麻酔の前後は嚥下機能(飲み込むちから)が低下しており、このときに胃の中に食べ物が残っていると、麻酔の前後や手術中に吐き気をもよおしたとしても、うまく吐き出せずに吐物が気管に入り、誤嚥性肺炎をおこす可能性があるためです。
Q.傷口はどれくらいの大きさ?痛くない?
A.手術後すぐは痛がっておとなしくなる子もいますが、普段通り元気に過ごす子がほとんどです。また、痛みにより力むことができず、排便しない子もいますが、これは一時的で2~3日で落ち着きます。手術後、縫合糸との反応により、傷口が腫れることがあります。
だいたいのイメージとして傷口の場所をイラストで表してみました。
Q.傷口はどうするの?
A.傷口はなめたり、掻いたりしないようエリザベスカラー(ヒポカラー)や腹帯を装着して、傷口を保護します。去勢をした雄猫には基本的になにもつけずに過ごしてもらいますが、傷口を気にするようであれば、エリザベスカラーをお貸ししています。
Q.手術後の過ごし方は?お散歩は行ってもいい?
A.いつも通りの過ごし方で、お散歩も行っても大丈夫です。ただし、手術後すぐの激しい運動や草むらに入ったり、泥んこになって傷口が汚れるくらい遊ぶのは控えましょう。念のため、元気や食欲の変化にはよく注意して観察してくださいね。
Q.傷口が汚れたら?
A.傷口が汚れたら、シャンプーはせずに水で洗い流すor水で浸したコットンで綺麗にしてあげてください。ただし、体全体のシャンプーは抜糸が済むまで控えましょう。
Q.退院後、食事はいつも通りに与えていいの?
去勢手術の場合は日帰りのため、麻酔をかけてから時間がたっていないので、食事はお休みします。翌日から様子を見ながら与えてもらい、食べるのであればいつも通りに与えてください。
避妊・去勢後は太りやすくなるので食事管理に注意しましょう!
避妊・去勢後用のカロリーを抑えた食事がありますので、退院の際にお話ししますね。
その他、気になる点があればお気軽に聞いてくださいね!