家庭どうぶつ白書2017の中で、犬の12歳以上の死因
及び猫の5歳以上の死因で最も多いものとして泌尿器疾患があげられます。
その中でも特に高齢猫では慢性腎不全の占める割合がかなり大きく、
10歳以上の猫の10頭に1頭、
15歳以上の猫の3頭に1頭は
慢性腎不全と言われており、
多くの猫が慢性腎不全に罹患していると感じています。
なんで猫は腎臓病になりやすいの?
現在人と暮らしている猫の先祖はリビアヤマネコと言われており、砂漠で生活していたため少ない飲水量で生活します。
そのため濃縮した尿を作るため腎臓に負担がかかり腎臓病になりやすいのではないかと言われていました。
最近の研究では血液中にあるAIMというタンパク質が腎機能低下時に上手く機能しない事が原因であるとも言われています。
でも慢性腎不全になったら一緒に生活してたら気づくよね?
実は慢性腎不全は一緒に生活していたとしても
すごくわかりづらい疾患なのです。
慢性という名前の通りゆっくり徐々に進行していく病気であり、
初期は水をたくさん飲み、薄いおしっこがたくさん出るようになる程度の症状。
その後進行すると食欲が落ちたり、口臭の悪化、嘔吐や便秘、脱水などが認められます。
後者はかなり進行した状態で認められる症状なので
調子を崩して来院するとかなり進んだ腎不全である事も少なくありません。
家で気づくことは決して多くないのです。
慢性腎不全になったらどのくらい生きられるの?
腎臓病はIRIS(国際獣医腎臓病研究グループ)でステージ分類されており、Creという血液検査の数値で分類されます。
ただしこのCreは腎機能の75%が低下しないと血液検査で上がってきません。
つまり血液検査で上がっている時にはもうそれだけ腎機能が低下しているということになります。
また最近はSDMAという検査にて腎機能が40%程度低下していれば血液検査にて上昇してくる検査も存在します。
このIRISステージ分類でステージ2を超えた場合、ご飯を腎臓療法食にすることが推奨されています。
◯各ステージにおける生存期間(猫)
ステージ2:1151日(来院時に血液検査でステージ2であった場合)
1151日(点滴にて脱水を補正しステージ2であった場合)
ステージ3:778日(来院時に血液検査でステージ3であった場合)
679日(点滴にて脱水を補正しステージ3であった場合)
ステージ4:103日(来院時に血液検査でステージ4であった場合)
35日(点滴にて脱水を補正しステージ4であった場合)
◯各ステージにおける生存期間(犬)
ステージ1~2:450日以上
ステージ3:140日程度
ステージ4:20日程度
どんな治療があるの?
まず残念ながら、慢性腎不全は治りません。
一度失われた腎機能は戻らないため、残された腎機能を守るため腎臓病の進行を抑える治療や症状に応じた治療が主体となります。
そのためステージ2以降では腎臓療法食に変更することや、腎臓病治療薬であるラプロス®︎の投薬が推奨されます。
また蛋白尿がある場合は蛋白尿を抑える薬、高血圧がある場合は血圧を下げる薬などが必要となります。
その他にリンの吸着剤や皮下点滴などその子に応じて治療が変わります。
早期に発見するには?
血液検査や尿検査にて早期発見することはできます。
高齢猫の場合病期の罹患率も上がるため、定期的に病院で身体検査や血液検査をすると良いかもしれません。