◆床ずれ・褥瘡(じょくそう)とは・・・
寝たきりなどで体位変換が困難になり、同じ姿勢を続けていると
皮膚や関節など圧迫された部分の血流が悪くなり、
壊死が生じる状態のことを言います。
今回はこの『褥瘡(じょくそう)』について
詳しくお伝えします!
▪褥瘡(じょくそう)のできやすい部位
肩や腰、頬など骨の突出した箇所にできやすいです。
寝たきり状態の高齢犬の多くは横臥位で寝ているため、
側面の骨突出部ができやすい部位です。
特に太ももの付け根部分の関節や肩関節には深い褥瘡(じょくそう)ができやすくなります。
▪褥瘡ができる要因
寝たきりなどにより圧迫を受けた部位の血行障害のほか、
寝たきりの大型犬を持ち上げずに引きずって移動させた場合に
摩擦などにより損傷する可能性もあります。
その他、
・体重の減少により骨ばってきたとき
・低たんぱくなど栄養状態の悪化
・グレーハウンドなど皮膚の薄い犬種
・大型犬など体重が重い犬種
などが挙げられます。
◆褥瘡(じょくそう)の治療・管理
高齢動物の場合、全身麻酔によるリスクや再発の可能性が高いため
病院での外科的治療より家庭での処置・管理が治療の中心となります。
▪褥瘡に対する初期治療の手順
① 褥瘡周囲部分の汚れや付着物を除去し周辺の毛をバリカンで短く刈ります。
褥瘡のふちに毛が残らないようにしっかりと刈りましょう。
② 褥瘡全体を水道水や生理食塩水などで洗浄します。
シリンジ等を使い圧力をかけて洗浄を行います。
③ 軟膏等で褥瘡の壊死組織を取り除きます。
(感染がある場合や傷が深い場合、切除が必要な場合は病院へ!!)
④ 患部を清潔に保ち、軟膏やドレッシング材を使用し治療します。
▪褥瘡管理に便利なドレッシング材
長期治療・管理を行う上で高価なドレッシング材を使用することは困難です。
ご家庭で代用品をドレッシング材として使用することができます。
✩食品包装用ラップ
・・・ラップを大きめに切って褥瘡を直接覆います。
完全に密閉しないように注意。
テープなどで軽く固定し、上から紙おむつやペットシートを当て
端から溢れてくる滲出液を吸収させます。
✩穴あきポリ袋と紙おむつ(ペットシート)
・・・台所で使う水切り用の穴の開いたポリ袋の中に
フラットタイプの紙おむつやペットシートを入れ
サージカルテープで留めます。
褥瘡に当ててネットやストッキングなどで固定すると
過剰な滲出液はポリ袋の穴を通ってシートに吸収されます。
◆褥瘡の予防
褥瘡とその他の創傷の違いは「受傷原因が存在し続けること」です。
寝たきりの動物が立って歩けるようにならない限り
原因となる圧迫やスレは継続して患部を傷つけ続けることになります。
褥瘡では予防的な管理と治療を同時並行的に行う必要があり
「治療=予防」という認識が大切です。
予防的な管理で一番重要なのが「除圧」です。
除圧とは体圧を分散させて骨突出部に集中する圧力を軽減させることをいいます。
低・高反発マットや体圧分散マットを使用する場合、
体重や体型に合った硬さ・サイズのものを選ぶことが大切です。
最近はペット用ベッドも進化し優れた性能のものがあります。
ハンモックやポール型クッションなどを利用して伏せの姿勢を
とることにより圧迫を軽減することができます。
▪体位変換について
以前は「2時間ごとの体位変換」が推奨されていました。
しかし最近では、
高機能マットなどによる除圧法の改善により
必ずしも頻繁な体位変換をしなくても
褥瘡対策をすることが可能になりました!
また、引きずったり無理な姿勢での体位変換により
新たな褥瘡を作り出す危険性も指摘されています。
2時間ごとの無理やりな体位変換は
する方・される方両者にとってストレスにもなります。
マットによる除圧がうまくできている場合、
体位変換は必要最低限でよいと考えられています。
▪褥瘡パッドについてのよくある間違い
褥瘡は骨の突出部にできるため
除圧を目的として
この部位に厚手のクッション材を当ててしまうことがよくあります。
しかしこれは、
圧迫部分に厚みのあるものでさらに圧迫を加え
悪化してしまう「大きな間違い」です!!
褥瘡の発生部位の圧迫を防ぐためには
除圧は「面」で行う必要があり、
「点」で行ってしまうと
その部位の圧迫により新たな褥瘡を形成したり、
褥瘡周囲の血行を遮断して悪化させてしまう可能性があります。
▪皮膚を清潔に保つ
便や尿などで皮膚が汚れたままになっていると、
褥瘡ができやすくなったり感染しやすくなります。
患部を清潔に保ち、処置を容易にするためには
褥瘡の周囲の毛はできる限り広範囲に短く刈っておくとよいでしょう。
糞尿が患部、周囲に付着した場合には
なるべく早く洗浄した方が良いですが、
毎回水道水や水圧を用いた洗浄は困難ですので
赤ちゃん用のおしりふきを活用するととても便利です。